バタビヤの悲歌
陸軍憲兵少佐 長 幸之助 命
昭和二十二年十二月三十日 ジャワ島バタビヤ「グロドック」にて法務死
福岡県宇美町出身三十一歳
1,玉きはる、命のきはに、月見れば
歌ごゑたかし、花みれば、白露しとゞ
大いなる、光のうちにいつくしき
人の心は、たらちねの、母をしおぼゆ
せゞらぎの、清けき里の、ふる里の
春の野山は、今こゝに、われと在るなれ
今こゝに、われと在るなれ、花かすむ里
2,みんなみの 命し終えぬ ますらをや
いで立ち行かむ、靖国の、花咲く宮へ
君います里
3,みんなみは、茜にもえぬ、バタビヤの
丘に散り行く、むらさきの、花打ち見れば
花の心の、しづ心なく
私と一緒に六名の方々がバタビヤで散ります。
で服役してをられます。
す。もう日が暮れてまゐりまして、字も判然と見えません。
ク刑務所に行きます。
月二十八日夕、独房にて)